原状回復工事のアスベスト調査が必要な理由と義務化の全知識
- 藤建設
- 6月23日
- 読了時間: 12分
更新日:8月4日

▶︎1. 原状回復工事におけるアスベスト調査の重要性

1.1 原状回復工事とは
原状回復工事とは、建物や部屋などを借りていた状態から、契約時の元の状態に戻すための工事です。主に、賃貸オフィス・店舗・マンションなどで、退去時に行われます。
たとえば以下のような作業が含まれます。
壁紙や床材の張り替え
間仕切りや造作物の撤去
電気・水道の配線や設備の復旧
空調設備の撤去や清掃
特に、テナントの退去やリフォーム前には原状回復工事が欠かせません。
一見シンプルな作業に見えて、建物の構造や内装に深く関わるため、法令や安全面にも注意が必要です。
1.2 アスベスト調査が必要な理由
2006年以前に建築された建物には、アスベスト(石綿)を含む建材が使われている可能性があります。 原状回復工事では壁や天井、床を解体・撤去することが多く、これによりアスベストが飛散するリスクがあります。
アスベストの健康被害は深刻で、肺がんや中皮腫の原因になるため、法律でも厳しく管理されています。
アスベスト調査が必要な理由は次のとおりです。
法令で事前調査と報告が義務化されている
工事中の作業員や周辺住民の健康を守る
アスベスト含有が判明した場合、適切な除去対策が求められる
こんな失敗、ありがちです。
アスベストの有無を確認せずに解体工事を始めた
調査が不十分で、後から工事を中断せざるを得なくなった
報告義務を怠って、罰則や行政指導を受けた
これらを避けるには、原状回復工事の前に専門業者によるアスベスト調査を確実に実施することが大事です。
忙しい退去準備のなかでも、「解体前の調査は法律で決まっている」と知っておくことが大切ですね。
▶︎2. 原状回復工事とアスベスト調査の義務化と報告対象

2.1 法改正による義務化の背景
2022年4月、建築物石綿含有建材調査者によるアスベスト事前調査の義務化がスタートしました。
これにより、一定の工事を行う際には、着工前にアスベストの有無を調査し、その結果を国に報告することが法的に義務付けられました。
この法改正は、以下のような背景から実施されています。
アスベストによる健康被害が社会問題化
過去にアスベストを吸引したことによる中皮腫や肺がんの発症が報告されており、被害防止が急務となっています。
調査の質と信頼性の向上
無資格者による曖昧な調査が横行していたため、一定の資格を持つ調査者による実施が必須に。
国のデータベース整備の必要性
調査結果を一元管理することで、将来の政策判断にも役立てられるようにする目的もあります。
こうした流れを受けて、原状回復工事も対象工事に含まれるケースが多くなってきています。
2.2 報告が必要な工事の条件
では、どのような原状回復工事がアスベスト調査・報告の対象となるのでしょうか。
以下の条件に該当する場合、報告義務が発生します。
【報告対象となる工事の例】
解体工事:床面積の合計が80㎡以上
改修工事:請負金額が税込100万円以上
特定の建材を扱う工事:天井、壁、床、配管などに影響する作業
たとえば、オフィスの原状回復で間仕切りや床材を撤去する場合、床面積や費用規模によっては報告対象になります。
こんな見落としに注意
「小規模だから大丈夫」と思って未報告に
工事範囲を正確に把握しておらず、報告不要と判断
複数業者に発注した結果、金額の合算で報告対象に該当
報告義務の有無は「建物の面積」や「工事の金額」で変わるので、事前の確認がとても重要です。
2.3 調査結果の報告手続き
原状回復工事にともなうアスベスト調査では、調査結果を国へ電子的に報告する義務があります。
報告は「石綿事前調査結果報告システム(GビズID)」を通じて行います。
【報告手続きの流れ】
調査実施(資格者が現地調査)
報告内容の取りまとめ
GビズIDを使って電子報告(工事開始の7日前まで)
報告完了通知の取得・保管
※報告は、工事を発注した側(元請)が行うことが基本ルールです。
注意点は以下のとおりです。
工事直前にバタバタして、報告期限を過ぎてしまう
GビズIDを持っていない、もしくは発行に時間がかかる
報告内容に不備があり、再提出を求められる
スムーズに進めるためには、「調査から報告までの流れ」を早めに理解しておくことが大事です。
特に、初めて報告を行う場合は、余裕を持ったスケジュールが欠かせません。
▶︎3. 原状回復工事前に行うアスベスト調査の流れと費用

3.1 調査のステップと期間
原状回復工事の前に行うアスベスト調査は、法律で定められた工程に従って進める必要があります。作業をスムーズに進めるためにも、調査の流れをあらかじめ理解しておくことが大切です。
【調査の基本的なステップ】
建物図面・使用建材の確認
施工当時の設計図書や仕様書をもとに、アスベスト使用の有無を確認します。
目視調査(非破壊調査)
現地で調査員が建材を目視確認します。破壊せずに可能な範囲で調査を実施。
検体採取(必要な場合)
疑わしい建材があれば、サンプルを採取して専門機関にて分析します。
分析結果の報告書作成
数日~1週間程度で結果が出て、正式な報告書が作成されます。
GビズIDを使った報告提出(該当する場合)
全体の調査期間は、通常3〜7営業日程度です。ただし、検体分析が必要な場合や報告書作成に時間を要する場合は、1〜2週間かかることもあります。
特に退去や工事予定が決まっている場合は、できるだけ早めの着手が重要です。
3.2 調査費用の目安と補助金の活用
アスベスト調査の費用は、調査対象の範囲や検体数によって大きく異なります。
原状回復工事に関連する調査の場合、以下が一般的な目安です。
【調査費用の目安】
項目 | 費用相場(税別) |
目視調査(1回) | 約3万円〜6万円 |
検体採取+分析(1検体) | 約1万円〜2万円 |
報告書作成+提出代行 | 約1万円〜3万円 |
たとえば、2〜3検体の分析が必要な場合、合計で10万円前後になるケースもあります。
費用負担を軽減する方法として、「自治体の補助金制度」の活用があります。補助内容や金額は地域によって異なりますが、次のような制度が一般的です。
アスベスト調査費用の一部補助(上限5〜10万円)
除去作業も含めた包括的な支援
補助金を活用すれば、実質負担を大幅に減らすことができます。
ただし、事前申請が必要な場合が多いため、調査を依頼する前に確認しておきましょう。
3.3 調査を怠った場合のリスク
原状回復工事の前にアスベスト調査を行わない、もしくは不十分なまま進めた場合、さまざまなリスクが発生します。
【主なリスク】
健康被害の発生リスク
アスベストが飛散すると、作業員や近隣住民に深刻な健康被害を及ぼす可能性があります。
法令違反による罰則・指導
報告義務を怠った場合、50万円以下の罰金や行政指導の対象となることがあります。
工事の中断やスケジュール遅延
工事中にアスベストが発見された場合、即時中断や専門業者の手配が必要となり、予定が大幅に狂います。
実際、アスベストの有無を事前に確認しなかったことで、工期が1ヶ月以上遅れたケースも報告されています。
また、クレームやトラブルの原因にもなるため、調査は「念のため」ではなく、「必須の工程」として捉えるべきです。
原状回復工事をスムーズに、安全に進めるためには、事前のアスベスト調査が欠かせません。
▶︎4. 原状回復工事に関連するアスベスト調査の法律と規制
4.1 関連する主な法律
アスベスト調査は、複数の法律に基づいて厳しく規制されています。原状回復工事で解体や改修作業を行う際も例外ではなく、工事の前に関係法令を理解しておくことが欠かせません。
特に関係が深い法律は以下の3つです。
【アスベスト調査に関係する主な法律】
労働安全衛生法(安衛法)
作業員の健康を守るための法規。アスベストを取り扱う際の事前調査・措置・作業基準が規定されています。
大気汚染防止法(大防法)
大気中へのアスベスト飛散を防ぐための法律。報告義務や作業基準が定められています。
建築物石綿含有建材調査者制度(制度改正により新設)
2022年4月に義務化された制度。一定の工事に対して、調査者資格を有する人による調査が必須となりました。
これらの法律により、アスベスト調査の方法や実施者、報告内容までが細かく決められているのです。
4.2 調査を行う際の資格要件
原状回復工事でアスベスト調査を行う場合、一定の資格を持った専門家が調査を行うことが法律で義務付けられています。
具体的には、次のいずれかの資格を有する調査者が必要です。
【調査者に必要な主な資格】
建築物石綿含有建材調査者
特定建築物調査員
一級・二級建築士(一定の研修修了者)
特に2022年4月以降、「建築物石綿含有建材調査者」の資格が実質的な標準となっています。
こんなトラブルが多いです。
無資格の担当者が調査してしまった
外注先に資格確認を怠ったまま依頼
資格はあるが法定研修を受けておらず無効扱いに
調査結果の信頼性は、調査者の資格に大きく左右されます。
工事の安全と法令遵守のためにも、資格の有無は必ず確認しましょう。
4.3 法律違反による罰則
アスベスト調査や報告を怠った場合、法律違反として行政処分や罰則の対象になることがあります。原状回復工事でうっかり調査を忘れてしまうと、大きな責任問題に発展しかねません。
【主な罰則とリスク】
違反内容 | 想定される罰則 |
無資格者による調査の実施 | 是正命令、改善指導など |
報告義務の未履行 | 最大50万円以下の罰金 |
作業基準違反による飛散事故 | 損害賠償請求・工事停止命令など |
また、行政指導や罰則だけでなく、以下のような実務的リスクも考えられます。
信用失墜による取引停止や契約解除
補助金・助成金の申請却下
工事のやり直しによるコスト増加
法律違反は「知らなかった」では済まされません。
事前に必要な手続きを把握し、確実に対応することが大事です。
▶︎5. 原状回復工事のアスベスト調査で注意すべきポイント
5.1 調査対象の見落とし
原状回復工事では、天井・壁・床などさまざまな箇所を解体・撤去するケースが多くなります。
そのため、アスベスト調査の対象となる建材を正確に把握することが非常に重要です。
よくある見落とし箇所には以下のようなものがあります。
天井裏の断熱材やボード
配管の保温材
下地に使われた仕上げ材
接着剤やパテ材の中の含有物
表面からは見えない場所にもアスベストが使用されている可能性があるため、解体範囲をもとに「どこを調査すべきか」を慎重に判断する必要があります。
ありがちな失敗例
解体するつもりのない箇所まで壊してしまい、未調査部分からアスベストが飛散
設計図に記載されていない建材が存在し、現場で混乱
調査結果を工事担当者と共有せず、誤ってアスベスト含有部分を解体
事前に現場をしっかり確認し、調査対象の「もれ」を防ぐことが大切です。
5.2 不適切な業者選定
アスベスト調査は専門的な知識・資格・経験が求められるため、調査業者の選定は原状回復工事の成否を左右するといっても過言ではありません。
不適切な業者を選んでしまうと、以下のようなリスクが発生します。
資格を持たない調査員による不備な調査
検体数が不十分で、後に再調査が必要になる
調査報告書の内容に不備があり、提出が遅れる
こんな点に注意しましょう。
料金が安すぎる業者は、調査の質が低い可能性あり
報告書作成・電子報告まで対応しているか確認
過去の実績や専門資格の有無をチェック
選ぶべきは「価格だけでなく信頼できる専門性を持つ業者」です。
業者とのやり取りの中で、「調査対象」「検体数」「報告期限」などを事前に明確にしておくことも忘れずに。
5.3 調査結果の報告漏れ
せっかく調査を実施しても、報告手続きを忘れてしまっては意味がありません。
特に原状回復工事のような退去に伴う作業では、スケジュールがタイトになりがちで、報告業務が後回しになることも多いです。
主な報告漏れの原因は次のとおりです。
GビズIDの準備が間に合わなかった
報告が必要な工事だと認識していなかった
元請業者と下請業者の間で役割が不明確だった
報告手続きを忘れると、工事開始が延期されたり、罰則を受けるリスクもあります。
調査の実施と報告業務はセットで考えることが大事です。
報告義務があるかどうかを早い段階で確認し、スケジュールに組み込んでおきましょう。
▶︎6. まとめ:原状回復工事を安全・安心に進めるために
6.1 工事前のチェックポイント
原状回復工事では、見た目をきれいに戻すだけでなく、法令遵守や安全対策も欠かせません。
そのため、工事前に必ず押さえておきたいチェックポイントがあります。
【工事前に確認すべき主な項目】
アスベスト調査が必要な工事かどうか(面積・金額の条件)
調査の実施者は資格を持っているか
調査結果の報告が必要かどうか
スケジュールに調査と報告の工程が含まれているか
たとえば、退去日が近づいている中で、「報告は工事7日前まで」というルールを見落としてしまうと、大きなトラブルにつながります。
慌ただしい状況でも、チェックリストを用意して事前確認を徹底することが大事です。
6.2 信頼できる業者の選び方
原状回復工事とアスベスト調査をスムーズに進めるには、信頼できる業者の存在が不可欠です。
価格の安さだけで判断すると、後々のトラブルの原因になることもあります。
選定時には、以下のポイントを押さえましょう。
【業者選びで重視すべきポイント】
アスベスト調査に関する資格・実績があるか
原状回復工事と調査を一括で依頼できるか
調査から報告まで一貫して対応してくれるか
スケジュールと工程管理が明確か
こんな業者は避けた方がいいです。
回答が曖昧で質問に対する説明が不十分
調査と工事を別業者に分ける前提になっている
「報告はいらない」と法令違反の提案をする
最終的に信頼できるのは、「丁寧な説明と透明性のある対応」をしてくれる業者です。
6.3 安全・安心な工事のために
ここまで解説してきたように、原状回復工事におけるアスベスト調査は、単なる「確認作業」ではなく、安全性と法令遵守のための重要なプロセスです。
安心して工事を進めるには、以下の3つを意識しましょう。
早めの計画とスケジュール管理
退去日や工期を見越して、調査・報告に必要な日数を確保。
正確な情報共有
調査結果は元請・下請・発注者の間で確実に共有しておく。
トラブルの芽を事前に摘む
法律や制度の理解不足による失敗を防ぐため、最新情報を業者と一緒に確認。
「安全第一」で計画を進めることが、原状回復工事を成功させる最大のカギです。
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